気になる豪傑


 最近、池波正太郎の「人斬り半次郎」幕末編を読んでいる。

中村半次郎、通称 人斬り半次郎、薩摩藩からの幕末の志士として活躍。後年は、桐野利秋と名乗り、日本初の陸軍少将となる。征韓論政変で辞任、兄のように慕う西郷隆盛とともに鹿児島に帰り、西南戦争で西郷とともに鹿児島市内城山にて自刃。

生まれは、下士であった西郷隆盛、大久保利通などが集まる鍛冶屋町よりさらに貧しく、半次郎さんは、さらに北西?にある吉野原(よしのばる)にある、鬱蒼とした山手の村にすみ、鹿児島特有の火山灰が体積したカルストのやせた大地をなんとか開いて、唐芋(まだサツマイモとよんでいない)を主食として、郷士と名付けられるものの、幼い頃から色々の逆境に力強く向かい、母とか弱い妹をなんとか食べさせる。


写真は、半次郎さんがすんでいた、吉野原の近所にある吉野公園。3年ほど前の3月ごろの撮影かと思う。朝露にぬれた土と青い芝ににおいを今でもはっきりと思い出せる。芝生に顔とカメラをつけて昼寝心地で幾度かシャッターをきった覚えがある。

さても、愛さずにはいられないのが、中村半次郎の人となりだろう。
とても頭の回転が早く、もし読書階級、少なくとも、甲突川ぞいの鍛冶屋町の同世代のように、郷中教育を受けていれば、文字を読み書きできたろうが、彼は字を習うチャンスすら与えられないほど貧乏で不利な生まれだったというが、剣の腕だけは西郷の目に止まったという。

ウェスタンではピストルの早打ちをガンスリンガーなどというが、半次郎さんは投げた果物が地面につくまで、4回抜刀し、4回鞘に音もなく収めるのだとか・・・。

上洛し、西郷に付き従い、軍の将となるからには、部下どもの士気を鼓舞しなければならなかっただろう。しかし、文字は覚えきれなかった。本書、池波正太郎氏は「天皇陛下」の「陛下」を「かいか」といってしまった、と言い。司馬遼太郎氏は「弊藩」「貴藩」が逆になっていることを同僚の藩士に指摘されても、「あはは、そいはええ学問をさせてもうた」と笑い飛ばしたという。

さて、島津の殿様について京都にやってきた半次郎さんも、どうやら六角堂の「へそ石餅」を食べたらしい。登場人物がその土地の名物料理や名菓を堪能して「うまい!」というのも、池波作品の楽しみの一つではないだろうか?
たしかに真夏の京都で、陰に入り『おうす』でまんじゅうをいただくと生き返るようだ。

話を戻す。「人斬り半次郎」と呼ばれるからには、それなりのことがあったのだろう。
京都では三条小橋を見回る新鮮組でさえ、「薩の中村とはすれ違うな・・・・。」と局中で注意喚起がされていたようだ。つまり、中村半次郎は、通常の抜刀術に必要な、とまって踏ん張り腰を入れる、をしなくても、歩きながら人が切れたし、その切り口は、調べにきた同心与力が思わず顔を覆うほどだったという。

などと言うと、陰惨で恐ろしい人のように聞こえるが、有象無象のにわか勤王浪士が短慮と腹癒せをぶちまけて歩く幕末の京都で、不可避の理由で抜刀した事のほうが多かったと言う印象だが、刀大小で脅すだけの浪人と、示現流免許皆伝の差は、明らかだろう。良く彼の記録をご存じの方ならどう教えてくださるだろうか?

西南戦争では、赤いマントにフランス製のコロンを香らせて、軍を率いたと言うのはどうやら史実らしい。甘いマスクで誰からも好かれるのは、計算や裏表のない豪傑だったからに違いないと想っているのだが。

う〜ん、2011年に訪れた鹿児島の事をそろそろまとめて何らかの記録にしたくなってきた。

やはり、旅はしてみるものだ。
小説や物語に出てくる場所に実際にいっていると、「あ、あそこだ」などと、まるで登場人物の後ろから歩いているように想像できる。
文庫で旅する、京都や鹿児島というのも粋ではないかと思う。

京都 六角堂頂法寺に関する過去の記事はこちらから。↓

■ 京都見る歩く(洛陽三十三所観音巡礼)Vol.1 六角堂

■ 京都見る歩く(洛陽三十三所観音巡礼)Vol.31 満願確認と先達公認

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