『不思議談 第三夜 「黒い救い主」』

『不思議たん2015』って言いながら、2016になってしまってます・・・。(汗)生きてると色々ありまさぁね。すいません読んで下さっている方が居らして下さってたら、すんませんね。(笑)

『不思議談 第三夜 「黒い救い主」』

私が物心がついてすぐの事ですから、今から40年前ですね、近所の同い年の子供達で遊んでましたよ。ヨウコちゃんとヒロシ君と云ったと思う。
今では世知辛い世の中ですから3〜4歳の子供なら公園なんかで、親が付きっきりで遊ぶところでしょうけど、当時はそんな事あまり見かけませんでしたね。
大阪の北の外れの町に住んでましてね、島本第一中学校の脇に、近隣の田畑へ水を遣る為の用水路があって、まあ、葉っぱなんかを流して遊べるくらいの綺麗で浅い水路です。
でも、結構な距離を流す潅漑用水ですから流れが速い。コンクリートで作られているし、小さい子供が入れば縁は腰くらいの高さ、足なんぞすぐにとられますよね。
今考えて一番恐怖なのは、そこの見通しの悪さね、校庭のフェンスと中村耳鼻科を始めにした住宅群の裏なので、表通りからは、意識してのぞかない限り完全に死角ってやつですよ。

お察しの通り、葉っぱの競争に興じすぎてドボンっと落っこちたのは、私。辛うじてコンクリの間から茂っている草の束を掴んで踏ん張ったけど、膝までの急流が幼児の足が立つことを許す訳がない・・・。
流されれば忽ち細い暗渠の口に飲み込まれる。
子供ながらに「もうあかん、お母さん!」って叫びながら、水路のゴミ取り柵に掴まるしかないのか?いや無理だな・・・。って思いましたね。

もう力が入らない、ヨウコちゃん、ヒロシ君の声は聞こえるけど、遙か上に聞こえる。そのとき、ぐいっと引きあげられ、ふと首を回して見ると、大きな男の人の黒縁めがね。ぎょろっと血走った目が、まるで、お前!なにしてる!と云うように私の顔を横目で見ている。ぎゅっと片腕に抱えられて、ようやく火がついたように泣き出しましたね。
子供一人が座れるくらいの水路の縁に置かれて、すぐ見回すともうその男の人は居ませんでしたね。

記憶をたどると、その男の人の黒縁めがねと怒ったような目しか思い出せない・・・。それに3歳児の記憶なもんで、鮮明な部分は前述の通り。なんとか記憶を補完してみると、よくマンガにでてくる知らない人の表現が、そうで在るように、その男の人は上下真っ黒なスエットのような生地。

ただ・・・。

この記憶は3歳の時のもので、ずっと忘れていましてね、中学の頃かな、初めて親父の兄弟の一番下に「政志」と云う名前の叔父がいて、その子が2歳半の時に、下から二番目の叔父さんが遊びに行った後をよちよち歩きをして、門静と云う土地にあった家の前の小川に落ちて溺死してしまったと云う話を、下から三番目の叔母に聞いた瞬間に、まるでカメラのストロボが暗闇を明るく照らしたようなフラッシュバックで、パッパッパッと脳裏に浮かんで思い出したんですよね。

だからね、あのとき私を助けてくれた黒い救い主は、その政志叔父さんだったんじゃないかな?って思ってるんですよね。
命日をちゃんと聞きましてね、必ずこう言うんですよ「政志くん、おいちゃん君の事良く知ってるよ、おいちゃんがそっちへ行ったら一緒に遊ぼうね」ってね。


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『不思議譚2015〜2016(笑)』
今年も此の季節がやって来ましたね。
こんにちわ、不思議譚の語部、大和川淳一です。(笑)

今年のお話し。

第一夜「あっ、」

第二夜「さっき帰って来たよね?」

第三夜「黒い救い主」

第四夜「苺摘み」

第五夜「奥さんそう言う事なんで」

第六夜「手をかしてぇ」

第七夜「青白い顔の若者」

第八夜「Mさんとばったり」

第九夜「引磬と白足袋」




『不思議譚 第二夜 「あれ、さっき帰ってきたよね?」』

皆さんも学生時代に運動部に入っておられたり、通学が大変だったりしたら、こんな経験って無いですか?
特に猛暑の夏場とか、凍えそうな真冬、兎に角家が遠く感じる。

 私の中学は距離こそ大したものじゃなかったんですけどね、少し山間を切り開いた様な地域でね、急な坂を、夏は大汗、冬はぶるぶる振るえもって、テクテク上ってく。
ようやく坂が終わったと思ったら、公団住宅、いわゆる団地ってやつの最上階の5階、40年も前ですからね、5階建てくらいならエレベーターなんて小洒落れたもんなんて無いですよ。
 だから下校の道のりはと言うと、長い上り坂の後さらに自宅のある棟まで歩いて、最後に5階まで階段を上がってかないといけない・・・。

 勿論、血の気の多い中学生ですから体力は在ったものの、サッカー部と裏部活のボクシングでガッツリ絞られた後の階段のきついったら無かったですよ。
そうなるとね、「あ〜、あと何段で家に着くぞ!」って家に入る瞬間とかを頭に描いて自分に鞭を入れる訳です。
玄関前に立って、ドアノブを回し、靴を脱いで、鞄を部屋に投げ込んで、「さあ〜コーラでも飲むぞ〜!」ってな事まで克明に想像して、えっちら、おっちら・・・。

 夏の本当に暑い日でしたよ、さてやっと本当に家の前に立ってドアを開けた・・・。
するとね、お袋が玄関に立って、きょとんと私を見てる。私の部屋の方向と私を見て、二度見、三度見してるんですよね。
そして言ったんだ、「あれ、今あんた帰って来たよね?」ってね。「いつぅ〜?!」ってこっちはなりまさぁねえ。
「ほんの2〜3分前よ〜」ってお袋が言うしね、変な事言うな〜と思いながらも聞くんです。
お袋によるとね、ほん直前に私の気配がして、いつもの様に下足箱に左手を置く音がして、靴を脱いで、足音が玄関から私の部屋に入ってって、鞄を投げる音まで聞いたもんですから、てっきり私が帰宅したんだと思って、「お帰り〜」って声をかけたが誰も居ない・・・。そこへひょっこりもう一人の私が目の前に居るもんですから、お袋からすれば狐に摘まれたって感じですよね。

 たとえば、戦地に行っているはずの息子が今帰ってきたとかって話を聞きますよね。数日後戦死の報告が来たとかね。作家の色川武大さんの場合だと、学生の頃から他の人に目撃されて、挨拶もしなかったと相手に怒られるんだけど、ご本人には一切そんな覚えもないし、ほかの誰かがちゃんと、「いや色さんは飲み屋のカウンターで寝てたよ」って言う人が居る。なんでもナルコレプシーという発作的に眠りに落ちてしまう症状を持っていたらしく、それについては本人の著書にも、ほかの作家仲間さんの著書にも書いている。

 話が少しずれましたけど、どうやら私の「はよ家に着け〜」っていう気持ちだけが先に帰ってたらしいんですよね。無論、私にそんな念力みたいな事出来ないですし、第一、自覚も無けりゃ、信じてもいない・・・。
ただどうやら、在るらしいんですよ、その人の意識だけが帰りたい、行きたい場所まで行ってしまって、実際に家族や知人に見られてるってことがね。
それ、私自身が逆の立場になって、ある人を目撃したのに、後になって「あれ?おかしいな〜・・・。」なんて事がありましたよ。不思議ですよねえ〜。
まあ、その話は又の機会に譲って、今夜はこのくらいにしておきましょうかね。


『不思議譚2015』
今年も此のきせつがやって来ましたね。今日は、不思議譚の語部、大和川淳一です。
今年のお話し。
第一夜「あっ、」
第二夜「さっき帰って来たよね?」
第三夜「黒い救い主」
第四夜「苺摘み」
第五夜「奥さんそう言う事なんで」
第六夜「手をかしてぇ」
第七夜「青白い顔の若者」
第八夜「Mさんとばったり」
第九夜「引磬と白足袋」



『不思議譚 第一夜 「あっ、」』

あれは、父が退職をして終の住処だといって、家を建てた時ですから、一回り昔になりますか、姉の嫁ぎ先の近所で「これから小さな孫達を見てやるんだ」なんてお袋と嬉しそうにしてましたね。

私はとい言えば、ポンコツ息子で申し訳無いんですけど長男だしね、さあ家を建てる土地を決めにいくぞって時には同行する訳です。
 いわゆる新興住宅地と言っても、郊外ですからね、まだ田畑を整地して間なしの長閑な良い所ですよ。隣は畑、その中にL字になって真新しいアスファルトの道を挟むように、これからご近所さんが住むであろう宅地の候補地が広がってましたよね。

 こう、親父、お袋、姉と私で歩いてる。すると珍しく親父が「こう言う時はお前が決めるのが良い」って言うんですよ。あ〜なるほど、後で不具合なんかがあると「これだからお前が決めると・・・」とかね、冗談とも本気いともつかない事言うんです、そういうの好きな人なんだ彼は。
でね、ふと、お袋を見ると「ん?」なんか様子がいつもと違う・・・。「どないしたんや、おかん?しんどいんけ?」聞くんですけど、なんだか神妙な顔のままで、手を払う様にして、気にするな、って感じで黙ってる。
おかしいな〜って思いながらも、不動産屋の若い人も来てる事だし、土地決めちゃわないといけない。
場所はと言うと、L字の角地ってのも在ったんですけど、なんか一個ずらして、家の正面が道に当たるようにしようと、L字の頭の方が真南に向かっていてこれ以上家が建つことは無いですから。

ふ〜っと吸い込まれる様にして、指をさして「ここに決定する!」と言った瞬間、デジャブってありますよね、あれを感じたと思ったら、お袋が「あっ、」って言ったんですよ、何とも言えない不思議な感覚でしたね、私とお袋が同じ空気の中に押し込まれたって感じ・・・。

と、同時にお袋の携帯がなりましたね。
それで携帯を切ったお袋がね「今、長野のおばあちゃんが死んだよ・・・」って言ったんですよね。
在るんですよね、そういう虫の知らせって言葉では言い表せない事ってね。

つい最近ね、お袋に聞いたんですよ、「あん時なんで、そういう不安な顔してたん?」ってね、そしたらお袋の生まれた地域ではね、家とか車とか、そんな種類の大きな買い物をするとき、希にその家の主人か、親族に何か在るんだって言う言い伝え的なものが在るんだそうですよ、それって誰がいってた?って聞くとね、その亡くなったおばあちゃんが言ってた、って言うんですよね。

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今年も此の季節がやって来ましたね。
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第一夜「あっ、」

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